ロックハンプトン スチームトラム
Rockhampton Steam Tram

ロックハンプトンで1909-1939年に走っていた蒸気機関で動く路面電車(電車ではないが)、スチームトラムが動態保存されています。
世界で最後に稼動しているといわれているロックハンプトンのスチームトラムに乗車できる体験は、とても貴重。
運転日が日曜日の午前~お昼過ぎまでとかなり限定的なので、予定を立てて訪問しなければなりません。

ロックハンプトンにあるアーチャーパーク鉄道博物館。
ここでスチームトラムが動態保存されています。

このアーチャーパーク駅はクイーンズランドレールのノースコースト本線の廃駅で、スチームトラムとは直接関係の無い駅です。
ロックハンプトンでのスチームトラムの復活にあたり、廃駅となったアーチャーパーク駅と側線を活用することで動態保存が可能となりました。


さて、ロックハンプトンを訪れるなら是非ともスチームトラムには乗車したい。 ところがこのスチームトラムは営利目的でないこともあり、乗車するにはある程度計画を立てておかなければなりません。

まず、アーチャーパーク鉄道博物館の開館時間は
日曜日 9時~13時
月~木 10時~3時
金・土 休館日
但し、 祝日や学校の長期休み期間は開館
日本ならば博物館は日中の適当な時間に訪問すれば良いのですが、ここではそうはいきません。
土曜日が休館というのも日本ではあまり考えられないですね。

そして!

トラムの運転:10時~13時
※※※日曜日限定※※※
※※2月から11月まで※※

そう、スチームトラムに乗車するには2月から11月の間の日曜日の10時から13時に訪れなければ ならないのです。

これは勤め人には少し厳しい条件です。
まず年末年始は運休で乗車不可。そして日曜日に訪れた場合、 月曜日の出勤は不可能なので、有給の追加取得が必須です。(オーストラリアに行く場合、数日は有給を取得する人も多いとは思いますが)

今回スチームトラムを訪問したときは、
ロックハンプトン→(バージンAU夕方便)→ブリスベン→(キャセイ夜行便)→香港→(キャセイ昼行便)→日本夕方着でした。
スチームトラムの運行はお昼過ぎで終わってしまうので、将来ブリスベン→日本の夜行便が設定されれば休日の最後を飾るふさわしい訪問地 として人気が出るかも!?


スチームトラムの運行開始時間が迫り、構内の入換えが始まりました。

スチームトラムの保管定位置は恐らくホームの一つ隣の線路なので、ホームにトラムを付けるための移動準備があります。


乗車場所で停車し、乗客を待つスチームトラム。

せっかくロックハンプトンまで来たのだから、限られた運行時間内で乗車も撮影も両方楽しみたい!
そのためには時刻表を取得しなければ・・・と思って訪ねると、
発車はお客さんが(ある程度)集まったら出発するので、時間は決まっていない とのこと。

通常の日曜日だと博物館のお客さん自体がまばらなので、発車時間が読めません。
ただ、9時に博物館が開館して、10時から運行開始なので、10時には乗客が少しでもいれば出発すると思われます。
この日は約1時間置きに計4回(最終便は半分のみのショートコース)運転がありました。


停車中のスチームトラムを撮影。

この停車位置における撮影はなかなか難しいものがありました。
まず、屋根ぎりぎりのところで停車するため、10時~13時では太陽光の光が正面のみ、他は影になってしまいます。
(発車すると、画像奥の北方向へ走り出します。)
そのため、停車中のトラムの撮影は、顔以外真っ暗or画像のように超逆光のどちらかになってしまいます。
スチームトラムは蒸気機関車と同じように前後で顔が異なるため、似たような条件で撮影するのは少し大変です。

しかし、最後は運が味方をしてくれました。詳細はページ一番下で↓↓↓


スチームトラムの特徴である機関庫の釜。

燃料は石炭ではなく、コークスです。
蒸気機関車のように黒煙を立ち上らせて走るわけではありません。


公式側の運転台。

100年以上前に設計された、とてもシンプルな造りです。
かつてのロックハンプトンのトラムは香港と同じように、片側の運転台のみで運行していました。


非公式側の運転台。

即席な感じで最低限に抑えられています。
かつての営業時は後方展望ができる席でしたが、現在は運転室?の扱いです。
アーチャーパーク駅の側線を行き来する運用のため、新たに設置されたものと思われます。


客室座席。

車内を通り抜ける通路は無く、このようにコンパートメントが並んでいます。
片側を4人掛けとした場合、着席定員は28名です。


客室照明。

可愛らしい電球です。
運行時間が日中に限られているので、点灯する機会は少ないと思われます。


車両には扉やバーも無く、とても開放的です。

営業当時はカーテンで仕切られていたようです。


客室ステップ。

刻印が施されています。


発車したスチームトラム。
デニソンストリートをのんびりトコトコ走ります。

すぐ横はノースコースト本線です。
ノースコースト本線とアーチャーパーク駅の側線は平行していますが、交わることはなく完全に独立しています。
運が良ければ貨物列車との並走もあるかもしれません。
(貨物が接近している場合は走行しない可能性もありますが…)


走り去るスチームトラム。

本当は色々な角度で撮影したかったのですが、運転本数がわからず乗車機会を逃してしまわないように、沿線撮影はこれで きりあげました。


博物館にはスチームトラムの資料室があり、様々な展示物がありました。

こちらは当時のスチームトラムの様子。
現在は1両で走っていますが、当時は一回り小さいトレーラー車を連結した2両編成が多かったようです。
そのため、運転台も片側しか必要が無かったと思われます。


ロックハンプトンの街並みを走るスチームトラム。

1909年の運行開始から廃止される最終便の1939年6月24日の午後11時までの間に、スチームトラムは 4000万人以上の乗客を運び、運賃で35万ポンド以上を集めながら450万マイル以上を走りました。

1937年のロックハンプトン市議会において、スチームトラムをディーゼルバスに全て置き換えるという満場一致の決定を行いました。


当時の路線図。

基本的には単線で、終点にはループ線が設けられているのが特徴です。
これは香港と同じ方式ですが、スチームトラムはトレーラー車の牽引の関係もあるため、ループ線は必須であったと思われます。
複線区間は環状部分の3分の1程で、トラムは環状線を通ることで折り返しすることなく市街地を貫通していました。

この路線図には書かれていませんが、現在のアーチャーパーク駅はPOST PFFICEの”T”あたりのところに位置し、 クイーンズランド鉄道ノースコースト本線が南北(上から下)へ走っていました。
そのため、北側で単線の平面交差、南側で複線の平面交差がありました。
クイーンズランド鉄道とスチームトラムの衝突事故も発生しましたが、列車同士の事故でしたが死者は発生しませんでした。


当時の時刻表。
モータリゼーション前の地方鉄道といった本数です。


1970年代初頭にロックハンプトンのスチームトラムに関心が集まりました。
オーストラリア国立ナショナルトラストのロックハンプトン支部は、スチームトラムの車体の一部を探し始めて、 オーストラリアの200周年記念式典に間に合うように、スチームトラムの再建に取り組みました。
このオーストラリア200周年記念式典は鉄道業界も影響が大きく、シドニーでは式典に合わせ、かつてない21世紀の電車を発表するとして Tsetタンガラの製造が決定しました。

しかし、車体の一部と言うよりもはや残骸の状態から、営業運転まで復活させようとする意気込みが凄いですね。


発見された車体の一部。

ここまでくると保存車や放置車といったジャンルに入れてもらえなさそうなレベルです。


車体の組み立て。

これを見ると、車体は新造に近いようにも見えます。


真新しい車体。

ここまで綺麗だとギリシャ神話のテセウスの船のような話です。
テセウスの船とは、パラドックスの一つです。
ある物体において、それを構成するパーツが全て置き換えられたとき、過去のそれと現在のそれは「同じそれ」だと言えるのか否か、という問題をさします。
テセウスが功績を収めた船を保存するにあたり、木造故に痛み朽ちていく部分は新しい木材に交換し、それを繰り返すことで 永遠に保存するよう命じたが、いずれ全てのパーツが交換されてしまった場合、それはテセウスの船と呼べるのか…というもの。


車体と駆動装置が1つになりました。

蒸気機関ユニットはブリスベンのアンティーク機械協会から提供されました。




プーリーボイラーや蒸気給水ポンプも提供されました。
たくさんの素材を基に、ブリスベン近郊のイプスイッチ鉄道工場で復元工事が行われました。
イプスイッチ鉄道工場は現在、イプスイッチ鉄道博物館として開放されています。
およそ100年前、熱い期待を込められて造られたスチームトラムが時を経て、再び熱い期待と共に造られていきます。

それぞれが様々な思いを持って保管していたパーツが1つの車体に組み込まれ、再び走り出す。
過去のそれと現在のそれは「同じそれ」。テセウスの船は、改修をされ続けてもやはりテセウスの船 ということに違いはないでしょう。

現在ロックハンプトンのシンボルとなったこの車体は、世界で最後に稼動しているプーリースチームトラムと言われています。


閉館時刻が迫り、スチームトラムが定位置に向けて回送する準備を始めました!

アーチャーパーク駅のスチームトラム停車位置は屋根の切れ目直下のため、公式側は顔以外全て影、非公式側は超絶逆光 でした。
しかし、上記回送では車体を一旦ホーム中程まで持ってきたため、車体全てが屋根の陰になり、 明暗の少ない写真を撮れるようになりました。

こちらは公式側。


こちらは非公式側。

スチームトラムの保管定位置に変更がなければ、閉館間際にこのような写真を撮影できます。
現役時はアーチャーパーク駅を通ることはなかったので、このように大屋根の下に停車するスチームトラムは 現代ならではの光景でしょう。


スチームトラムの全区間4K前面展望映像です。

スチームトラムはアーチャーパーク駅の側線を行き来するため、半分は後方展望です。
北側(公式顔)の往復、南側(非公式顔)の往復、南側(非公式顔)の閉園前のショートカットコース往復の順に続きます。


ブリスベンから638km離れていても訪れる価値のあるロックハンプトンのスチームトラム。
特急電車ティルトトレインで6時間、ブリスベン~ロックハンプトンの国内航空線を利用して1時間半なので、 ブリスベンを訪れるなら是非ロックハンプトンまで足を伸ばしてみてください。


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