メアリーバレーラトラー
Mary Valley Rattler

メアリーバレーラトラーはブリスベンからおよそ170kmにあるギンピーからアマムアまで 蒸気機関車や旧型気動車を運行する保存鉄道です。


メアリーバレー鉄道は1915年にギンピーからブロールーまでが全通、更なる延伸計画は中止となりノースコースト 線の支線となりました。この鉄道はバターの輸送が盛んで、沿線には当時オーストラリア最大規模のバター工場が ありました。1970年になるとマーガリンとの競争やイギリスが欧州との経済活動を深めたことによる輸出量の減少により、 採算性が悪化しました。1995年にパイナップル輸送が終了し、1996年から観光鉄道として再スタートしました。 接続するノースコースト線はノースギンピー付近8kmの区間は1989年に電化の際に新線に切り替わりギンピー駅 は貨物駅に格下げ後1995年に廃止。新線から切り離されたメアリーバレー鉄道は孤立線となりました。
画像は現在営業運転をしていないノースコースト線の旧線。


ギンピー駅構内。
かつてはノースコースト線とメアリーバレー鉄道の接続駅でもあり、大変賑わっていました。
ノースコースト線が1989年に旅客列車を電化した新線経由とし、貨物駅としての機能も1995年に廃止しました。
それ以降、ギンピー駅はメアリーバレー鉄道のみが発着する孤立した駅となりました。

メアリーバレー鉄道は観光鉄道として生き残りましたが2010年頃より助成金に依存した経営や安全不備が指摘され、速度制限は5km~25kmと大幅に引き下げられました。 沿線道路が災害で不通になった際は鉄道によるシャトルサービスも行いましたが2012年の脱線事故により運行停止、2013年に 会社解散となりました。



ギンピー駅西側の車庫とたくさんの留置車両。

この鉄道はギンピーの重要な観光産業であるとし、メアリーバレーラトラーとして復活することになりました。
2018年10月6日にギンピー~アマムア間が再開されました。
その後は下記のように運行されています。
土,日,水 蒸気機関車 ギンピー~アマムア1往復
木 旧型気動車RM76 ギンピー~アマムア1往復
金 RM2000気動車 ギンピー~モンクランド2往復

蒸気機関車の他に、気動車を2種類も定期運行している保存鉄道は非常に珍しいといえます。
ギンピーに水木金or木金土に滞在すれば、3日で全ての車両に乗車することができます。


ギンピー駅

その昔は鉱物、バナナやパイナップル等のフルーツ、バターなどの取り扱いが多く、貨物輸送が盛んでした。
そのため、旅客輸送が新線のノースギンピーに切り替えられた後も、ノースコースト線の貨物駅として1995年まで存続しました。
プラットホームは島式で、両側を線路に囲まれているため乗客は跨線橋と地下道を利用していました。
左側にはレールウェイホテルが今も残っています。


ギンピー駅構内から伸びる廃線跡。

引込み線か、専用線の跡ではないかと思われます。
かつてギンピーには3つの鉱山鉄道がありました。


遠くからでも見えるSLの廃車体。

少し落書きが目立ちますが、メアリーバレーラトラーの目印になっています。


鉄道従業員用の住宅地跡と思われます。


中は荒れ果てているようですが、建物自体は柵に囲われて管理されています。
廃墟のようですが、鉄道に関連する建物を含めたギンピー駅鉄道施設は遺産登録を受けています。


鉄道用の作業クレーン。

作業小屋のような建物も残っています。


貨物側線跡。

1995年に貨物列車が廃止されるまでは、ギンピーの駅構内いっぱいに側線が広がっていました。
ウィキペディアのGYMPIE STATIONのページを見ると、当時の写真を見ることができます。



貨物積込ホーム跡。

現在はリサイクルショップに転用されています。


ギンピー駅駅舎。

道に面して駅舎が立っているように見えますが、当時はこの駐車場も全て引込線のため、駅に行くには南に 大回りして跨線橋か地下道を通る必要がありました。


現在のメインゲート。

現役時は南側(画像左方向)の跨線橋もしくは地下道を通らないと駅に入れませんでした。
現在は東側の側線の線路を剥がし駐車場とし、直接道路から駅に入れるようになりました。


廃車体の一部。

蒸気機関車のカウキャッチャーがモニュメントとして展示してあります。


駅入り口。

チケットカウンター、売店、ミニ博物館、カフェがあります。


ミニ博物館。

鉄道の部品等が展示してあります。
この画像ので見えている範囲がほぼ全ての小さな博物館です。


SLヘッドマーク。

上のヘッドマークはギンピー~アマムア100周年記念のものです。

下のヘッドマークはメアリーバレー鉄道の運行停止処分後、メアリーバレーラトラーとして 再出発した2018年10月6日の始発列車の記念ヘッドマークです。


カフェプラットフォームNo,1

鉄道利用者以外にも開放されているカフェで、鉄道の運行時間外も営業しています。
建設当時は従業員の食堂だったようです。


プラットホーム1番線。

島式の駅でしたが、反対側の線路が剥がされたため、1面1線+側線の構造です。


留置された保存車両群。

1番線から良く見える位置に保管されています。


蒸気機関車のボイラー部分。

知らない人には蒸気機関車とはわからないであろう状態で保管されています。


かなり年季の入った木造客車。

とてもボロボロで、日本なら100%解体の運命にある状態です。
しかしオーストラリアではこのような状態から地道に部品を修理し、復活させてしまう例が多々あります。
これからの匠の技に期待します。


駅南端部分には跨線橋があり、その横にレールウェイホテルが建っています。


レールウェイホテルギンピー。

このホテルは1915年に建造され、現在はクイーンズランド州の遺産登録を受けています。
クイーンズランド州における駅前ホテルの先駆け的な存在です。
この美しい建物は斜面に立地しているため1階の高さが変わっています。
1階東側(画像左側)はバーになっています。
現在も宿泊可能なようですが、訪問時は営業していませんでした。


メアリーバレーラトラーに乗車します。

今回はRM76という1930年代の旧型気動車です。


RM76によるギンピーからアマムアまでの全区間車窓映像(進行方向右側)です。
ギンピー駅にて停車中のRM76の車内映像とアマムア駅でのターンテーブルによる方向転換も収録しました。


終点のアマムア。
画像奥がブロールー方面です。

線路はこの先のブロールーまで続いていますが、列車が走行可能なのはアマムアまでとなります。
1面1線+機回し線の小さな駅です。


終点アマムア駅に到着したRM76。

運転台が片方にしかないため、到着後はすぐに機回しを行います。
そのまま進行方向のブロールー方向に進んで機回し線に転線するかと思いきや、 そのままバックしてギンピー方面に引き上げました。


ギンピー方面へバックし、機回し線に切り替えます。

蒸気機関車で運行の場合は機関車のみブロールー方面に進んで機回し線に転線していると思われます。


転車台に乗り入れるRM76。


転車台が回り、編成全体が逆転します。
転車台は人力のようです。


編成が逆転し、再びギンピー方向に走り、アマムア駅の本線上に戻ります。


アマムア駅の駅名表。

かつては有人駅でしたが、1988年に無人化されました。


アマムア駅の駅舎。
小さくて可愛らしい駅舎です。



アマムア駅舎内部。

通常は非公開ですが、特別に見学させてもらいました。
現在は倉庫になっており、僅かな鉄道部品とピクニック用のテーブルがありました。


アマムア駅には建物が二つあり、駅舎と倉庫であったと思われます。

採算が悪化していた頃は無人化した駅の構造物をレンタル倉庫として売り出していたようです。


アマムア駅南端より、ギンピー方面を望む。

右の線路が本線、左の線路が機回し線です。


アマムア駅の転車代。

蒸気機関車は1両、旧型気動車は2両まで転換させることができます。


今回は旧型気動車のピクニックツアーという商品のため、ランチボックスが付いています。
乗車のみも選択可能でしたがギンピーやアマムアの駅前には殆ど商店がなく、食料確保のために 25ドル程追加し、このプランを選択しました。


ランチボックスの中身。

大きなサンドイッチ、マフィン、クッキー、クラッカー、チーズ、オリーブの実、ミネラルウォーター、そしてワインの ミニボトルです。
ワインは別料金として案内されていましたが、どうやらおまけでくれたようです。


アマムアより本当の終点、ブロールー方面。

すぐに踏切があり、蒸気機関車で運転の際は機回しで使用するため現役です。


ブロールー方面。

列車はこれ以上進めないようになっています。
この先も遺産登録された木造の橋梁があるようで、いつか復活することを願っています。


ギンピーかアマムアまでは20km以上の距離があり、片道30分以上かかります。
この規模はオーストラリアの保存鉄道で3番目の規模となります。
1910年代からずっと愛されていることも納得の、のんびりとした素晴らしい鉄道です。


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