スペインの万世橋 チャンベリ駅
Estacion de Chamberi
Chamberi Station

チャンベリ駅はマドリード地下鉄1号線開業当初に設置されていた駅で、車両増結によるホーム延伸が困難なことから1966年に廃駅となりました。
その後、地下鉄博物館として駅構内を一般に開放することになり、現在は見学ができるようになりました。
開業時の様子を今に伝える廃駅の存在は、正にスペインの万世橋駅といえます。

マドリード地下鉄1号線は1919年に8駅の路線として開通し、同時にチャンベリ駅が開業しました。
それ以来市民の足として親しまれ、戦時中は防空壕の役割も果たしました。
1960年代に入ると利用者の増加のために1号線の全ての駅が4両60mから6両90mに増やされることになり、ホーム拡張工事が行われることとなりました。
しかしチャンベリ駅は構内がカーブしている上に、教会がすぐ近くにあるため工事が技術的に困難で、さらには前後にあるイグレシア駅とビルバオ駅が近いということで廃止されることになりました。
1966年5月12日に閉鎖されたチャンベリ駅は壊されること無く40年以上も地下に眠っていましたが、 地下鉄開業当初の面影を残す貴重な施設ということで、地下鉄博物館として一般に公開されることになりました。


地下鉄博物館として生まれ変わったチャンベリ駅の入り口。
2006年に工事が始まり、2008年に地下鉄博物館としてオープンしました。 予備知識が無ければ素通りしてしまいそうな外観です。 イグレシア駅、ビルバオ駅のちょうど中間にあり、それぞれの駅から500mも離れていません。
入場料は無料となっており、10-14時の間に定員制で時間を区切って公開しています。

なお、この”地下鉄博物館”の知名度はやや低いようで、道行く人に場所を尋ねてもわからないことが多かったりします。
マドリードの人にどこを観光したか訪ねられたときに地下鉄博物館と言って、その存在を知ってる人と旅行期間中に会うことはありませんでした。


公開時間の10時が迫り、見学希望者が集まってきました。
入場無料ということもあり、気軽に見学に来る人が多いようです。

この日は水曜日でしたが、いつでも公開しているわけではないようです。
土日だと公開している可能性が高いと思われます。


閉館時間が14時なのは、スペインではお昼休憩となるシエスタの時間になるためです。
14-16時はマドリードのお店、特に博物館はシエスタとなるため一旦閉店し、街は閑散とします。
スペイン人は時間にとても厳しいのです。


入り口が開錠されると係りの人が地下まで誘導してくれます。
エレベーターもあり、ハンデキャップのある人も気軽に見学に来れそうです。
入場は団体行動となります。


受付カウンター横のドアを通ると、かつての地下鉄構内に入ります。
かつてのコンコースのすぐ横に新たに出入り口を作り、壁を一部くり貫いて設置されたことがわかります。

SALIDAはスペイン語で”出口”


かつての地下鉄通路に入るとすぐ左に木の扉があります。
この先はかつての地上へ続く階段となっています。

予想ですが、この扉はかつての駅の玄関として使われたものかもしれません。
そうだとしたら近年の地下鉄には無い珍しい構造ではないでしょうか。


扉を通るとすぐに地上へ続いてた階段となっており、ミニシアター室となっています。
手すり付近より下の壁は、かつてのレンガ張りのままとなっています。
当時の階段の段差を活用したミニシアター室はとても良い発想です。


上段からのミニシアター室の眺め。
階段の段差のおかげで、満席でも前の人に阻まれることなく視聴することができます。

ここでチャンベリ駅の説について10分ほどの簡単な映像が流れます。
言語はスペイン語のみでした。


紹介映像を見終えると先ほどの扉を出て通路真っ直ぐ進みます。
するとすぐに改札が見えてきます。
通路のレンガの壁と上部のアーチ構造が素敵です。


改札全景。
改札はこの一箇所のため、利用者が増加した現在では捌くことができないでしょう。
入場が2列、出場が3列のようです。


改札。
そのまま通過するだけの簡単なものです。


出札所。
窓口が一つあります。


出札所の中の様子。
現在は綺麗に整理され、何もありません。


1960年代の運賃表です。


改札でも10分ほど係りの人が説明をしてくれます。
やはり言語はスペイン語のみです。
あまり多くない見学者でこの狭さなので、現役末期の混雑は相当なものだったのではないでしょうか。


出札所の向かいにも詰所と窓口があります。
広くない地下空間に設置された詰所ですが、アーチ上のレンガ造りの縁取りが美しいです。


閉鎖当時の路線図。
現在の終点のバルデカロスはまだ未開業です。。
なお1919年開業当初の全長は3.5kmで全8駅でした。


改札を通って最初の階段はバルデカロス行きのホームへと続いています。
実際にホームに降りれるのはチャマルティン行きホームです。
特に看板や柵は設置されていませんが、原則立ち入ることはできません。
係りの人の指示に従います。


通路途中で改札方面に振り返りました。
改札の手前両側にバルデカロス行きホームに続く階段が下に続いています。


チャマルティン行きホームに続く階段。
こちらが実際にプラットホームに下りて見学できる方になります。


チャマルティン行きホームに出ました。
対向式2面2線の駅構内全体が大きなアーチ上のトンネルになっています。
壁面には大きく広告が描かれている他、タイルの装飾も当時のままとなっています。


線路際にはガラス製の大きな仕切りがあり、頻繁に通過する電車を気にすることなく安全に見学できます。
仕切りはかなり高さがありますが上部は開いているため、電車の通過音をそのまま聞きながら当時を偲ぶことができます。
チャンベリ駅はカーブ上にあるため、レールの軋み音がかなり大きいです。


反対のバルデカロス行きホームにはガラスの仕切りはなく、当時のままとなっています。
そのため一般には開放していませんが、チャマルティン行きホームからその様子をじっくり観察することができます。


。通過するチャマルティン行きの電車。
狭い構内ですが、ガラスの仕切りのおかげで安全に見学することができます。
1号線はホームドア等の設置はない中で、走行する電車に一番接近できるのがチャンベリ駅です。


駅の端のトンネル入り口。
タイルで綺麗に装飾されています。


機能性とデザインを両立させた構造がとても美しいです。
監視カメラが設置され、構内の安全を保っています。


チャンベリ駅の駅名表と、壁面に描かれた広告。
当時のものがそのまま残っています。


通過するバルデカロス行き電車。
プラットホームからは団体行動ではなくなるため、自由に撮影することができます。
見学が終わった人から各自で地上に戻ります。


通過するチャマルティン行き電車。
時間内であれば退場は促されないので、他の見学者がいなくなるまでホームに留まることもできました。


チャンベリ駅の駅名表と、当時の路線図。


バルデカロス行きホームの改札へ上がる階段。

自分がいるホームと向かいのホームを合わせて、見たいものを間近でも全体でも見ることができます。

チャンベリ駅を通過するバルデカロス行きの電車。

チャンベリ駅を通過するチャマルティン行きの電車。


じっくり見学していたら最後の一人になっていました。
帰りは特に申告も必要ありません。
このホームまで誘導していた係りの人は次のグループの説明のために引き上げていました。


たっぷり見学したはずなのに帰るのが惜しく感じてしまう。
それくらい魅力溢れる駅でした。




展示車両が1両も無い地下鉄博物館ですが、開業当時の駅と通過する現役の電車は正に生きた資料であり、素晴らしい博物館でした。


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